与那国のサトウキビ刈り

毎日新聞の書評で池澤夏樹氏が紹介している本は、買って読むことが多い。
ほとんどハズレがないから、なのだが、その中でも昨年の個人的大当たりが
『与那国島サトウキビ刈り援農隊 私的回想の30年』藤野雅之著ニライ社 だ。
与那国?援農?なんて知る人ぞ知る の世界だけどこういう本を書評に取り上げてくれる池澤氏のセンスがうれしい。

個人的、というのは、私も与那国でサトウキビ刈りの仕事をしたことがあるから。
もう20年近く前のことだけど。
過疎で人手不足の離島与那国でサトウキビ刈りをボランティアする「援農隊」というものがあるということは知っていたけれど、私は「援農隊」としてではなく、直接与那国農協に電話して農家を紹介してもらっていた。
なぜあの時「援農隊」として参加しなかったのか、自分でもわからなかったが、この本を読んで初めて謎が解けた。
30年にわたる「援農隊」の歴史の中で、その年だけ「援農隊」の募集をしてなかったのだ。
だから私は、「援農隊」と同じようにキビ刈りの仕事をしていたけど「援農隊」のことをよく知らなかった。
この本でようやく、与那国でなぜキビ刈りボランティアの仕事が始まったのか、当時の与那国の状況はどんなものだったのか、歴史の中でどんなふうに変遷していったかを知ることができた。

「沖縄は日本じゃない、与那国は沖縄じゃない」と与那国の人は言っていた。
たしかに与那国の状況は特殊。日本とはもちろん、沖縄本島とも言葉が違うし、歩んできた歴史もひとくくりに「沖縄」と言い切れない。

今は情報もネットなどで収集できるし、海底遺跡で有名になってテレビにもよく出ていたり、最近ではドラマ「Dr.コトーの診療所」のロケ地としても知られるようになった与那国だけど、昔はほんとに世界から切り離されたような孤島だった。
信号機がない。ナンバープレートのない車が走っている。石垣からの飛行機はスクラップ寸前。テレビはNHKしか映らない。
そんな伝説時代の与那国でのキビ刈り体験も特殊といえるが、それを共有できる本に出会えたのが、とにかくうれしかった。

キビ刈りも機械化が進み、援農も以前ほどたくさんはいらなくなったみたいだが、それでもいまだに援農隊募集があると知ってちょっと驚いた。

最近、このサトウキビ刈り隊に行く若者たちを描いた映画ができた。
『深呼吸の必要 』
まだレンタルで新作なので、安くなったら借りて観てみようと思っているけど、観る前から「現実はそんなに甘くないよ~」と、思わずぶつぶつつぶやいてしまう。
最近よくあるような2~3日の農業体験とはまったく違うんだから。
キビ刈りはほんとにほんとに過酷な作業です。
ああ、そのあたりのことをまたいつか書いてみたいなあ。

さて、与那国のことで最近もうひとつうれしかったのは、この平成の大合併時代に、断固として合併に反対したことだ。
さすが、与那国。大拍手だ。

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