高雄
島影が近づく。
漠とした黒い大きな影に点々と明かりが見える。
ざわざわと心が沸き立つ。
これが、台湾。
しかし、寄港地・高雄までは
さらに島をぐるっとまわって南下しなければならない。
島が見えてから到着するまでの長かったこと。
港に入ってからがまた、長かった。
すぐ近くに見える岸になかなか近づかない。
聞くところによれば、船を泊める場所がないから
空くのを待っているのだと!
そんなこともありか、台湾。
入国の手続きがまた、時間がかかった。
船を下りたときはすっかり夕暮れになっていた。
船の揺れがからだに残り、多少ふらつきながら
港のまわりに立ち並ぶ港湾建物が夕日に染まるのを見上げた。
留学青年に案内され、くだんのおやじと3人タクシーに乗り
高雄の街中に入り込んだ。
銀行はもう閉まっていたが、青年がどこからか両替をしてきてくれた。
その上、おすすめの宿まで紹介してくれた。
宿に荷を下ろし、屋台の並ぶ繁華街へ繰り出す。
牡蠣の卵とじと青島ビールでまずは乾杯。
屋台の看板、道路標識、店に並ぶ商品・・・
漢字フェチの私は漢字がたくさん並んでいるだけで
うっとりしてしまう。
しかも、簡易中国語ではなく、旧字体。
それらの文字が、赤や黄色の電飾で派手に飾られ
屋台に並ぶぎらぎら光る魚介類とともに
これでもか、とまでに迫ってくる。
立ち上る湯気の向こうの小姐の笑い声、額に光る汗。