『かえっていく場所』

『かえっていく場所』

椎名誠の小説はひとつも読んだことがなくて
ときどき、旅のエッセイを読むことがあるくらいだけど
『岳物語』に始まる椎名家の物語は、ひそかに気にとめていて
『続岳物語』『春画』と、本屋で出会うたびに、つい買っていた。

先日、本屋でその私小説シリーズの続編ともいえる『かえっていく場所』を見つけて
さっそく手に取り、最近の椎名家のことを知ることとなった。

『岳物語』ではまったく姿を見せなかった娘がずいぶんと登場していて
ちょっと驚いたが、それよりなにより
あのパワーの塊のような椎名氏が心を病んでいたこと、
さらに、いつもきりっと背筋を伸ばしているイメージの一枝さんまでも、
心を弱らせていたということに
あんなに元気に好き勝手してこれた人たちでも、やっぱりそうなんだ~~と、
タメイキが出てしまった。
まあ、でも、考えてみれば椎名誠も62歳だよ。信じられんが。

椎名家の物語に惹かれるのは、この家族4人の成熟したオトナの付き合い方だ。
今の日本では珍しい個人を尊重したスタイル。
アメリカに住む子どもたちと、旅の多い親たちが、時には世界のあちこちに散らばりながら
好き勝手に暮らしているようでありながら、しかし、根っこの部分でつながっている。

いったいどこの何がその求心力なのか。
「かえっていく場所」を、それぞれに持っているということなんだろうか。
それって、どうやって培われてくるものなのだろうか。

椎名家のことが気にかかるのは、その部分。その謎を知りたくて
この家族の物語を追っているようなものだ。

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