『ペルセポリス』

史実を基にした一代記が好き、と前にも書いたが、事実を基にした半生記ももちろん好き、それが、第三世界の女性のものならなおさら興味が湧きます。
世界の歴史がいわゆる先進国の男性を中心に形作られているからこそ、そのメインストリートには登場しない第三世界の女性が、自らの言葉で語り始めた現実は、ほんとうにリアルな人間らしい歴史の姿。

『ペルセポリスI イランの少女マルジ』
『ペルセポリス II マルジ、故郷へ帰る』
(マルジャン・サトラピ著・園田恵子訳)

1969年生まれのイランの女性の半生記。前衛的な両親の元で奔放に育った少女マルジは、小学生の時にイスラム革命に遭い、ヴェールをつけることを強いられる。弾圧、戦争、爆撃、拷問…混迷するイランを離れオーストリアに向かうが、そこでもまた、西欧文化に慣れ親しむことができず、故郷に戻る。そして結婚、離婚。

戦争を間近に体験し、西欧の享楽的な文化も経験し、アイディンティティを模索しながら成長していくマルジの赤裸々な告白…。
ここまであからさまにしてしまって大丈夫なのだろうか?と心配になるくらいだ。

その内容の過激な面白さもさることながら、このストーリーが漫画で描かれているということがまた素晴らしい。
ヤンソンのムーミントロルの原画のような、少し怪しげなモノトーンのシンプルな線描、しかしこれはファンタジーではなく、現代の若い娘の現実の物語なのだ。

イランという国のことも、そこで暮らす人々のことも、ほとんど遠い感覚でしかなかった私には、この本を1度読んだくらいでは、やはりわからないことがたくさんある。
それでも、この本は今年読んだ本の中でベストワン。


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