靖国神社をテーマに、日本と韓国の市民団体が共同制作したドキュメンタリー映画
『あんにょん・サヨナラ』を観てきた。
戦争を知らない若い世代が日韓共同で映画作りに取り組んだ、と聞いて
ぜひ観てみたいと思ったのだ。
主人公は、韓国人の李熙子(イ・ヒジャ)さん。
李さんの父親は、日本統治時代の韓国で日本軍に徴用されて中国で戦死。
しかも、何も知らされることなく、靖国神社に祀られていた。
韓国にある李さんの父親の墓には、名前が刻まれていない。
「父の名前を返してほしい」
李さんは靖国神社の合祀取り下げ裁判を起こし、
映画は、その活動を支える神戸在住の日本人、古川雅基さんの視点からも描かれる。
李さんの戦後60年の闘いの中から
いまだ戦争が終わっていないことが随所に感じられる。
日本人の遺族には手厚く待遇された、生死確認、遺骨返還、損害賠償などの戦後補償が、
韓国人には不十分だ。
戦時中は日本国籍として戦争に駆り出されたというのに。
韓国の人たちが何度も日本人への「恨(ハン)」という言葉を口にする。
その言葉のもつ意味は鋭く突き刺さる。
李さんは父の60年目の命日に、戦死した中国を訪ねる。
父が亡くなった病院の跡地で
それまで気丈な姿を見せていた李さんは、なにかがはじけたように号泣する。
靖国に反対する立場だけでなく、右翼団体や靖国参拝を支持する人々の
インタビューなども挿入され
それをどのように受け取るかは、観客にゆだねられている。
靖国神社は何が問題なのか。
小泉首相の靖国参拝に、なぜ韓国や中国の人たちは反対するのか。
ニュースを見て、ふと湧き上がってくる素朴な疑問。
そういう疑問を持つ人にとって、この映画はわかりやすい参考書だ。
韓流ブームの中では見えない、韓国と日本の関係がそこに見えてくる。
若い人たちにぜひ見てほしい映画だと思う。